川崎の雑木林に囲まれた丘に、一風変わった幼稚園がある。学校法人「風の谷幼稚園」だ。ここには、まわりの道路や田畑とへだてる塀もなければ、鉄製の遊具もない。さらには制服もなければ送迎バスもない。そんな環境の中に、「身体を動かす」「手を使う」「いっぱい歩く」を基本とした「これからの時代のこれからの幼稚園」がある。
「子どもの心と身体は、とても柔らかです。普通の生活をしていれば、すくすくと育っていくものだと思います。それなのに「最近の子供はなにかヘン」と言われているのはなぜなのでしょう?それは子ども問題というよりも、大人の問題であるような気がしてなりません。子供を取り巻く環境や大人の意識が、どこかでゆがんだ子どもを生み出してはいないでしょうか。大人中心の生活パターンや食生活、一見子ども中心に見える、知育や知識偏重の幼児教育の数々。幼児期の子供に本当に与えたいものはなんなのか。「風の谷幼稚園」で大切にしたいと思っていることは、とてもシンプルです。私たちは、子どもが本来持っている育つ力を信じています。そして、幼児期に思いきり身体を使うことこそが、バランスのとれた賢い頭と心と身体の発達を促すのだということを確信しています。」(天野園長)
天野優子・風の谷幼稚園園長プロフィール
1946年神奈川県生まれ。1964年大洋漁業(現・マルハニチロ)に入社。10年間勤務するが、子を持つ母が安心して働くには信頼できる保育所が必要だと痛感し退社。東京保育専門学校に入学。卒業後、保育所や、私立和光幼稚園での14年間の勤務を経て、1998年風の谷幼稚園を設立する。「これからの時代のこれからの幼稚園」作りに夢をかける。